<金口木舌>渡名喜選手の挑戦


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 偉人の名言には、失敗と課題の克服は成功への道筋―といったものが多い。逆境を乗り越えなければゴールできないのは真理だろう。そう信じられるから困難に立ち向かう勇気も持てる

▼絶対女王だった印象がある柔道の谷亮子選手はバルセロナ五輪は2位。期待を背負った次のアトランタも銀。そこで「やっぱり私も人間だった」と力なく笑ったところから雌伏の4年間を経て、シドニーで戴冠した
▼その姿に憧れて柔道を始めた渡名喜風南選手がドイツでの大会で準優勝し、東京五輪の代表入りを決定的にした。同階級の実績で抜きん出ているからだ。ただ、その談話は「まだまだ弱い」と反省が先となった
▼ドイツの大会をネット中継で観戦した。初戦の2回戦から準決勝まで全て一本勝ち。圧倒するというよりは4分間をたっぷり使い、好機に正確に決めるスタイルだ
▼決勝では伏兵に背中を持たれて動きが止まり、技ありを取られて敗戦。「できなかったことの次の対処ができない」と話す。劣勢からどう盛り返すかといった課題が残る
▼谷選手と同じ48キロ級。かつて日本女子の看板階級だった。渡名喜選手は両親が南風原町出身。アテネ五輪の谷選手以来、この階級で途絶えている金に沖縄からも期待が高まる。本人だけが知る鍛錬の日々になるはずだが、きっと課題を克服し、笑顔で表彰台に上がってくれるだろう。