<金口木舌>春惜月


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 「春惜月(はるおしみづき)」は3月の陰暦の異称の一つで和歌にも登場する。短歌や俳句では春の季語「春惜しむ」の句も多い。春の語源には草木の芽が「張る」、開墾の「墾(は)る」などの説がある

▼生命を育む土を掘ると、沖縄では命が脅かされる。那覇市古波蔵に建設中の県立特別支援学校「那覇みらい支援学校」の敷地で多数の金属反応があった。不発弾の可能性があり、2021年4月予定の開校が1年延期された
▼先月には那覇市立神原小学校の建て替え工事現場で不発弾処理も実施された。不発弾が校内で発見された事例は過去68件。宜野湾市でも昨年5月、戦中の手榴弾(しゅりゅうだん)を中学生が投げて遊んでいた
▼1974年のきょう、園児の歌声がかき消された。那覇市小禄で下水道工事中、埋もれていた不発弾が爆発した。3歳の女児を含む死者4人、重軽傷34人の大惨事となる。当時、近くの聖マタイ幼稚園ではひな祭りの最中だった
▼事故現場にある小禄病院構内には石碑が設置され、刻まれた文言が「春惜月」。亡くなった人たちを惜しむ意味を込めた。昨年10月、関係者が見守る中、除幕された
▼「はるのやよいの このよきひに」は、事故当時歌われた「うれしいひなまつり」の歌詞。小禄病院でも過去3回、周辺での不発弾処理で患者や医師の全員避難を体験している。足元から恐怖が消える「よきひ」の到来を願うばかりだ。