<金口木舌>夢のシューズ


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 酒やたばこなどの年齢による購入制限は現代の常識だが、ぜいたく品の製造や販売が禁じられた時期があった。戦前のことだ。宝石や高価な腕時計などが規制された

▼今の時代、購入制限のある靴がある。高速シューズとして陸上長距離界を席巻する米ナイキ社製の厚底靴のこと。マラソン男子で2時間50分以内、女子で3時間40分以内の持ちタイムが購入条件となる
▼国内トップなら突破している領域である。皆が履くのだろう、というのは素人考えのようだ。東京マラソンでは履いた選手が好記録を出した一方、そこまで伸びない選手もいた
▼世界陸連の厚さ規定40ミリをぎりぎりクリアする39・5ミリの超厚底だ。好記録に必要なフォーム、筋力を含め、人を選ぶのだろう。夢のシューズが手元にあっても勝負の要素は残ることを示すようなレースだった
▼一般ランナー抜きの大会では日本新が生まれ、2時間10分を切る、いわゆるサブテンの日本選手は19人となった。4年前の五輪時と比べ相当なレベルアップだという。高速靴の利点も生かし、五輪でのメダルに期待したい
▼イベントの自粛要請が続く。演劇、興行の開催を模索することに批判も出始めた。集団感染防止は大切だが、自粛しないのは悪という風潮は「ぜいたくは敵」という社会のようで息苦しい。見えない敵との戦いだ。冷静さを保って打ち勝とう。