<金口木舌>法の支配の危機


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 11月の米大統領選に向けた民主党候補指名争いはバイデン前副大統領の候補指名が確定的になりつつある。挑む相手は岩盤支持層を持つトランプ氏だ。米国民を二分する選挙戦になる

▼興味深い観測もある。トランプ氏の支持率が下がり敗色が濃厚になったときに投票を延期したり、敗れても選挙の無効を主張して居座ったりする可能性が米政界でささやかれているというのだ。「アメリカ大統領選 勝負の分かれ目」(大石格著、日本経済新聞出版社)で触れている。横紙破りの大統領が法をねじ曲げるシナリオはさもありなんという印象だ
▼「法の支配」が脅かされているのは日本も同じ。検察官の定年延長は検察庁法で認められていない。だが政府は東京高検検事長の勤務延長を決定し、後に法解釈を変更したと強弁した
▼法秩序の維持を任務の一つとする法務省が法を軽んじる。内閣法制局も人事院も異議を唱えず了承している。本来、暴走に歯止めをかけるべき部署が機能していない
▼森友学園問題では決裁文書改ざんを強制され自殺に追い込まれた財務省近畿財務局職員の手記が公表された。全て佐川局長(改ざん当時の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長)の指示―と記したが、安倍政権は再調査を否定する
▼近年、優秀な人材が官僚を目指さなくなったとの声を聞く。政治家の意向を忖度(そんたく)するだけではやりがいはあるまい。