<金口木舌>互いを尊重する社会に


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 「加害者やその家族もつらいだろうが、いつかは帰ってくる。でも息子は帰ってこない」。2003年、本島中部で同級生や上級生から集団暴行を受けて中学生が亡くなった。事件の1年後、父親を取材した

▼父親は「誰が悪いとは言えない。子どもたちは人を殺しても悪いと思わないような時代になっている。世の中がおかしい」と話した。県や市町村、地域の人々が子どもの居場所づくりに動いた。関係者は現在も子どもの貧困対策に奔走する
▼しかし事件をゼロにするのは難しい。県警は7日、本島中部のアパートで集団暴行があったとして、少年3人を含む5人を傷害容疑で逮捕した。10代の男子中学生に殴る蹴るの暴行を加え、急性硬膜下血腫などの重傷を負わせた疑いだ
▼暴力は程度を問わず、被害者や家族の人生を大きく変える。加害者を暴力に駆り立てた背景に何があったのか
▼03年の事件があった自治体では学校や教育委員会と自治会などの地域が連携して子どもたちを見守る態勢が強化された。民生委員の一人は「誰かが見守っている感覚が問題行動に歯止めをかける」と取材に答えている
▼情報技術の進展で人間同士の結び付きが希薄になったと指摘される。子どもたちの問題行動は社会のひずみを表している。家庭や学校、地域が連携して互いを尊重し合う人間関係を築いていくことが大切だ。