<金口木舌>DV被害者を取り残さない


社会
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 リーマン・ショック後の2009年、政府は国民一人当たり1万2千円の「定額給付金」を支給した。しかし横浜地裁には給付差し止めを求める仮処分が申し立てられた。申し立てたのは、夫のドメスティックバイオレンス(DV)被害から逃れるため住民票と違う場所で暮らす女性だった

▼給付金を世帯主が受け取ることになっていたため、女性たちは受け取れない状況だった。弁護団は「給付金の趣旨である『生活支援』が最も必要としている人に届かなくなっている」と訴えた
▼同じ境遇の女性は全国におり、各地の自治体は被害者も給付金と同額を受け取れるよう対策を取った。横浜地裁への申し立ても、被害者が同額を受給する見通しが立ち取り下げられた
▼新型コロナウイルスの緊急経済対策で実施される一律10万円の給付でも、同様の事態が懸念されていた。給付金は原則として、世帯主の金融機関の口座に一括で振り込まれるからだ
▼総務省は22日、被害者が避難先の自治体に申し出れば給付金を受け取れることを発表した。ただ受給にはDV防止法による保護命令が出ていることや配偶者暴力相談支援センターの確認書があるなど、要件を満たす必要がある
▼被害者より先に世帯主が受け取ってしまった場合の対応など、課題も残る。政府は困窮者を一人も取り残さないよう制度を整えていくべきだ。