<金口木舌>チャンスに変える


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 トップアスリートがネット配信で一人でできるフィットネスを紹介している。ラグビー元日本代表の立川理道選手が壁を相手にパスの練習をする動画に驚かされた。どう跳ねるか分からない楕円(だえん)球が何度も手元に戻る

▼種明かしがあって、投げているのは片側が平たい壁当て練習用のラグビーボール。パス技術の向上が期待できるそうだ。動画を見るまでこんなボールがあることを知らなかった競技経験者もいるだろう
▼色、柄ともに豊富になってきたのは自作が増えてきたマスクである。口元に透明シートを用いた手作り品もある。相手の表情や口元の動きを読み取り意思疎通をする聴覚障がい者と対話するためのものだ
▼今の状況では「マスクを外してほしい」とは言いにくい。コミュニケーションができないままやり過ごす聴覚障がい者もいるという。そこで兵庫県伊丹市の福祉団体が作ったのが透明マスクだ
▼口の動きで話を理解する口話法が奨励されてきた日本のろう教育の歴史である。手話は言語と多くの自治体が定めるが、浸透は十分でない。さまざまな活動が制限される中、障がいのある方はより不便を感じることだろう
▼石垣市は「マスクで口元が見えない」との指摘を受け、市長会見に手話通訳を付けた。不自由を感じる人たちに気を配り改善できれば、誰もが生きやすい社会に近づける好機ともなる。