<金口木舌>知恵の絞りどころ


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 高校生の娘2人を育てている40代のシングルマザーに取材で話を聞いた。4年前のことだ。女性は会社員。収入から家賃など固定経費を引くと手元に残るのはわずか。食費を1日千円に抑えてやりくりしていた

▼スポーツが得意で私立高校への進学を希望した次女には、やむを得ず公立高に進路を変更してもらったという。家計が苦しいが故に子どもの進路が狭まっているように感じると語った。「頑張っても状況は改善しない」と厳しい表情だった
▼母子家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」のアンケートでは、シングルマザーの半数以上が新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって収入減、あるいは収入がなくなる見通しと回答した。結果を4月に公表した
▼回答者の6割近くは派遣など非正規職員。政府や自治体に求める対策を聞くと約8割が「すぐに現金給付を」と答えた。子どもの休校で食費がかさみ、困窮に拍車が掛かっている
▼政府が全国民に一律10万円を配る「特別定額給付金」の支給によって急場はしのげるだろう。コロナ禍は長期戦になる。困窮世帯に焦点を当てた施策も求められる
▼三重県四日市市や兵庫県明石市は所得の低いひとり親家庭に給付金を支給する独自の支援策を発表している。予算には限りがあるだろうが、格差を広げないために知恵の絞りどころだ。