<金口木舌>「すばらしい新世界」とは


社会
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 近未来のロンドンでは1個のヒトの受精卵から96人の赤ん坊が生まれる。受精卵を扱う所長は「社会の安定性を維持するための主な手段のひとつなのだ!」と胎児の大量生産法を説明する

▼英作家ハクスリーは「すばらしい新世界」で、誰もが幸せに暮らし、不満など感じない社会を登場させた。社会の安定を優先させ、個人の尊厳は否定され、徹底した監視が敷かれる世界をテーマにしたディストピア(反理想郷)小説の古典の一つだ
▼新型コロナウイルスとの闘いに終わりが見えない中、経済・社会活動停止の継続もままならず、感染症との併存の在り方を考える動きも出てきた。「ウイズコロナ」や「ポストコロナ」と呼んで備えを説く論考も目立つ
▼政府は、新型コロナ対策の緊急事態宣言の延長とともに専門家の提言を踏まえ「新しい生活様式」を提唱した。マスクに手洗い、大勢での会食回避やテレワーク推進などを挙げる。安倍晋三首相は延長後の生活について「かつての日常に戻ることは困難」と持久戦への覚悟を求めた
▼日本より先に感染が広がった韓国は感染拡大対策で、F35戦闘機やイージス艦の戦闘システム購入費を削減して補正予算を組んだ。日本もこの際、既定路線を見直すいい機会ではないか
▼ポストコロナで新秩序の形成もささやかれる。それはどんな「すばらしい新世界」になるだろうか。