<金口木舌>阿弥陀仏の本願


社会
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 人は苦しい時にこそ、何かにすがりたくなるのかもしれない。寺の掲示板の格言が近年話題になっていて、感染症防止で外出自粛が呼び掛けられる今、改めて注目されている

▼寺の格言というと、仏教界の哲学的な用語だったり、釈迦(しゃか)の言葉だったり、とっつきにくい印象だったが、最近は受け入れられやすいポップなものも目立つ
▼仏教伝道協会が、ありがたい標語やユニークなものをSNSで募集して賞を選定している。2019年の大賞は「衆生は不安よな。阿弥陀動きます」(福岡県北九州市の永明寺)。芸人が芸能事務所を通さず営業する「闇営業」問題で混乱した後輩芸人に先輩が手を差し伸べようとしたつぶやきをもじったものだ
▼他にもテレビの人気キャラクターの決めぜりふを逆手に取った「ボーッと生きてもいいんだよ」(石川県加賀市・恩栄寺)といった入賞作も。島根県松江市の円成寺の「また失敗/また々失敗/だからなに!」は開き直りがすがすがしい
▼携帯電話の普及を背景に「ほとけさまに圏外なし」の創作モノや、「のぞみはありませんが、ひかりはあります―新幹線の駅員さん」と拝借モノまで多彩だ。どこかに光明を見いだしたい希望にぴったりはまるのだろう
▼迷いが多いのが「衆生」だ。だから強い決断力を示すリーダーを求めるのか。過度に他者依存はせず、適度に「ボーッと」前に進もう。