<金口木舌>死者の声を聞く


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 「当時の光州市民たちは韓国の民主化運動の象徴だ。現在の韓国をつくったと言っても過言ではない」。韓国の光州で民主化を求めた市民らに軍が発砲して160人以上が殺害された光州事件から40年を迎え、文在寅(ムンジェイン)大統領が述べた

▼発砲を誰が命じたかなど、今も多くの不明点が残る。当時の国軍保安司令官だった全斗煥(チョンドファン)元大統領が退任後に内乱罪などに問われた。しかし全氏は回顧録で「発砲命令などない」と責任を否定している
▼韓国は日本による植民地統治や朝鮮戦争を経験し、戦後も東西冷戦に翻弄(ほんろう)された。1987年の民主化後、さまざまな問題で国民を二分する論争が続く。日本や米国も無関係ではない
▼沖縄は名護市辺野古の新基地建設をはじめ、基地問題で県民が対立させられる。背景には沖縄への過重負担がある。米統治下で弾圧と闘った政治家、瀬長亀次郎さんの日記に分断や団結といった言葉がよく出る
▼69年6月23日の慰霊の日は「うらみをのんで殺された仲間たちのたましいにむくいる道は何か」「民主勢力をさらに団結させ強大なものにしなければならない」とある
▼嘉手納町で開かれた大会には雨の中、4千人が集まったという。戦争を繰り返さないために、復帰と米軍基地の撤去が必要だと強調している。命を奪われた祖先の声に耳を傾けることが分断を超える鍵になるのかもしれない。