<金口木舌>真相究明


社会
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 大切な人が亡くなっても別れに立ち会えない。コロナ禍の今、感染拡大防止のため移動自粛が求められている。県出身の女性が亡くなり、オンライン告別式が今月執り行われた。海外の遺族も参加し、企画した友人は故人が喜ぶことを願う

▼突然すぎる死と別れは、残された者の心に深い傷を残す。事件事故であれば、なおさらだろう。凶行によって命が奪われるたび、やるせない思いになる
▼2004年、刺殺事件が県内であった。動機は犯人の身勝手な思い込み。救命措置をされる被害者を見た。告別式で悲しみに沈む遺族の姿が忘れられない。公判で語った無念さは計り知れない
▼36人が犠牲になった京都アニメーション放火殺人事件で、京都府警は27日、殺人や現住建造物等放火などの疑いで青葉真司容疑者(42)を逮捕した。発生から10カ月。全身やけどからの回復を待った
▼被害者を1人でも救いたいと望みながら、医師は青葉容疑者の治療に当たった。容疑者は「どうせ死刑になる」と口にした。医療従事者は重い決断を迫られ、真相究明の道を閉ざしてはならないと向き合った
▼「治療は税金の無駄遣い」といった批判がインターネットに上がる。「長い裁判になると思う。動機が知りたい」。アニメ監督武本康弘さん=当時(47)=の遺族の思いだ。被害者参加制度もある。遺族の声が被告に直接届く機会になる。