<金口木舌>北米先住民の言い伝え


社会
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 北米先住民の集落ではたくさんの木製柱のトーテムポールを見掛ける。そこにはさまざまな動物の姿が彫られている。中でも独特の造形で目を引くのがレイブンだった

▼大きなくちばしが特徴的で、どこか日本のアイヌの文様を想起させるデザインだ。遠く太平洋を隔てて、どこかでつながっているのだろうか。北米先住民族の神話にも出現してくるという
▼このレイブンはワタリガラスのことを指す。日本では不吉とか不気味とか忌み嫌われることが多いカラス。真っ黒い姿も、その印象に輪を掛けたものか。間近で見ると意外に大きく、家のすぐ軒先で突然出合うとさすがにぎょっとさせられる
▼歓楽街で出た生ごみをあさる姿も毛嫌いされる一つの理由かもしれない。そういえば感染症対策の緊急事態宣言が出ている間、夜の飲食店も営業を自粛してごみが出なかったせいか、普段見慣れない住宅街近くのビルの屋上を何羽も飛び回っているのを見掛けた
▼北米のワタリガラスと違って、日本で広く見られるのは、やや小さいハシブトガラスやハシボソガラス。「古事記」によると、神武天皇が東征の途中で道に迷った際、道案内を務めたのはヤタガラスだった
▼もともとカラスは白かった、神の使いだったという物語や伝承は世界中で残っている。一つの物差しだけで見ていると、周りが見えなくなるのかもしれない。