<金口木舌>大海原へこぎ出す


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新造船の名前は進水式でお披露目されるのが通例だ。名をもらったばかりの船が台を滑って初めて海に浮かぶ。ダイナミックな情景だ

▼この人の船出も迫力があった。プロ野球、埼玉西武の與座海人投手のこと。21日のプロ初登板は堂々としたマウンドさばきだった。初戦は黒星を喫し、28日の登板でも勝敗は付かなかったが、初勝利も近いと感じさせる
▼浦添市出身。2018年、プロ1年目で右肘の靱帯(じんたい)再建手術を受けた。2軍でも登板はないままに復帰には最低1年とされた。復調できなければいずれは解雇となる育成選手へと契約も変わり、苦しい状況だった
▼昨年9月にようやく2軍で実戦デビュー。角度のある緩急の使い分けで結果を残し、育成から支配下登録へと復帰を果たした。リーグ2連覇中の西武で先発ローテーションの一角を担う
▼サブマリンと呼ばれる下手投げは球界で絶滅危惧とも言われる存在である。技巧にこだわり強打者を翻弄(ほんろう)するさまは痛快だ。手術を経ての復活は見る者を勇気づける。こぎ出したプロの大海原で存分に活躍してほしい
▼ことしのプロ野球は県勢の活躍が著しい。まだまだ開幕したばかり。ペナントレースを戦い抜くには常に順風満帆とはいかないかもしれない。調子には波もあるだろう。沖縄からの熱視線も力に躍動してほしい。挑戦し続ける姿がファンの力になる。