<金口木舌>マチグヮーに恋をした


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 山のように盛った芋やかつお節。豆を仕分ける女性たち。買い物客でごった返す通りから威勢のいい声が聞こえてきそうだ。芸術家の岡本太郎が切り取った那覇のマチグヮーの一こま

▼那覇市の開南に闇市が発生したのは戦後の1947年。翌年、平和通り沿いに公設市場が開設され周辺に商店が立ち並ぶマチグヮー(街)が形成された。岡本が沖縄を訪れたのは59年と66年。「それは私にとって、一つの恋のようなものだった」。写真集「岡本太郎の沖縄」にそう書いている
▼公設市場が「県民の台所」と呼ばれた頃を原風景として刻むのは中高年世代か。若い世代は観光客で活気づく印象が強いだろう。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で客足が遠のいている
▼そんな中、公設市場周辺の商店街関係者の有志4人がオンラインショップ「マチグヮーストア」を始めた。菓子店や雑貨店、精肉店など14店舗が登録している。注文を受けると4人が商品を取り寄せ発送する
▼運営メンバーの金城忍さんは「ネットショップをきっかけに、いずれは街を訪れてほしい」と願う。津覇綾子さんは「マチグヮーの良さを残しつつ、継続するために現状を変えたい」と話す
▼那覇市場振興会が呼び掛け、飲食店が加盟するデリバリーも実施中だ。荒波を幾度も乗り越えてきた店主らはたくましい。岡本が恋した街で試行錯誤が続く。