<金口木舌>観光の基本は


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 「戦後最大の危機」とされ経済に打撃を与えている新型コロナウイルス。新規感染者数ゼロが続き、景気回復に期待が高まっていた沖縄で再び感染者数が増加している

▼風光明媚(めいび)な自然を誇るやんばるは感染症対応の病床が2床しかない。北部の医療を守ろうと、北部市町村会が4月に北部への入域自粛を呼び掛けたところ、沖縄自動車道の許田インターチェンジの混雑が解消された
▼今年38回目を迎えるはずだった東村つつじ祭りや、市制50周年の名護市の名護まつりなどのイベントが相次いで中止に。それでも「収束したらまたやんばるに」と住民らは堪え忍んだ
▼感染者は悪くない。ただ、米軍基地内での感染拡大を見ると、これまでの県民の努力が水泡に帰した感がある。米軍の検疫や防疫態勢に欠陥があるのは明らかだ。タクシー運転手への感染の可能性も指摘され、県民は不安を抱いている
▼22日から「Go to トラベル」キャンペーンが始まる。東京は除外されたものの、共同通信社が実施した世論調査で62・7%が「全面延期すべきだった」と回答するなど国民の理解は得られていない
▼観光の基本は安心。県内で確認された陽性の経緯を見ても分かる通り、「移入例」は枚挙にいとまがない。地域と訪問者の双方が安心できるよう、来県者のPCR検査の義務付けなど政府にはかつてない対策が求められている。