<金口木舌>「首里城」、いつの時代も画題に


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 龍潭の向こうに首里城の赤瓦屋根がうっすらと見える。琉装をまとい舟遊びに興じる人々。画家・山田真山の「龍潭池より首里城を望む」(1955年)に描かれた場面だ。琉球王国時代への誇りと郷愁が浮かび上がる

▼山田が沖縄戦で灰じんに帰した首里城を描いたのは終戦から10年後。作品は県立博物館・美術館で開催中の「描かれた首里城」で展示されている。同展は戦前から戦後にかけて首里城一帯を画題にした絵画を中心に紹介している
▼同展に安谷屋正義の作品「守礼門」(49年)もある。守礼門が58年に再建される前に描かれた。扁額の文字「守禮之邦」がくっきりと刻まれ、首里城一帯は県民の心のよりどころだと実感する
▼戦前の記憶をたぐり寄せ失われた首里城を画題にした美術家たち。その思いを学芸員の豊見山愛さんは「沖縄の戦後復興への願いを首里城の姿に重ね合わせたのではないか」と解く
▼92年に復元された首里城をモチーフにアクリル画で表現しているのはアーティストの町田隼人さん。昨年10月の火災で正殿など8棟が焼けた首里城再建を後押ししようと作品をオークションにかけ、売上金を復興支援に全額寄付した
▼友人から「世界のウチナーンチュの頭に“首里城”の存在がある」と薦められ決意した。屹立(きつりつ)する首里城をもう一度。先人たちの思いを次世代がつないでいる。