<金口木舌>胸を張れ


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 スポーツ取材で気になるのは日々の天気である。夏季高校野球は一部で雨天順延があったが、順調に日程消化中だ。県高校総体は大きな影響なく集中開催を終えた

▼10年前の今日、美ら島総体が開幕した。総合開会式直前の県総合運動公園は雷雨だった。遅れて始まった式典後、県外選手団と県内の高校生が次々にハイタッチを交わした。雨に負けない笑顔の交歓が翌日の社会面を飾った
▼競技場でのさまざまな場面を写真付きで紹介する本紙企画「熱闘」がこの年、始まった。選手らのサイドストーリーを集めて載せた。今年の県総体、高校野球取材でも熱闘用にと多くの記事と写真が集まった
▼補助員を置かない今回の野球は試合中の双方が雨後の整備をした。大会規模の縮小で出場がかなわず、重量挙げにエントリーしたテニス選手がいた。出場を諦め、早々と引退した仲間、観戦できない保護者への思いを語る選手も多い
▼練習もままならなかった。競技に打ち込める環境について考えさせられたからか、家族や運営に当たった関係者への感謝も聞かれた。特別な大会だからこそだろう
▼コロナに負けず、大会が開かれたのはまずは選手の鍛錬あってのこと。感染を出さなかった当事者の節制の成果でもある。全国への挑戦権さえ奪われた前例のない夏を乗り越えた。胸を張って次のステージに進んでほしい。