<金口木舌>孔子の教え


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 幕末のペリー艦隊来航で徳川幕府は今後の対策で町民からも意見を募った。「250年間、『由(よ)らしむべし、知らしむべからず』を大法則としてきた江戸幕府にとって、はじめてのこと」と半藤一利さんが「幕末史」で書いている

▼江戸幕府のとってきた「大法則」の出典は孔子の言葉を集めた「論語」。政策の理由を人民に説明する必要はない、ただ従わせればいいという政治原理の一つとして定着している
▼実業家の渋沢栄一は、孔子がもし明治にいたなら「『民衆には施政方針を知らせるべきであり、自立させるべきだ』と必ずおっしゃるに違いない」と述べた。時代背景に応じて真意を考えるべきだと説いた
▼こちらは江戸時代の政治原理がまだ残っていたか。首相官邸のホームページで三権分立の説明図が、主権者の国民より内閣の方が上位にあるように描かれていた。ネット上で「内閣主権」などと批判を受け6月に差し替えた
▼安倍政権を見ていると、さまざまな政策決定の過程を国民には知らせなくていいと思っているのでは、と感じることが多い。森友・加計学園問題しかり、桜を見る会、公文書改ざん問題も、なぜそうなったのかの検証もできない始末だ
▼渋沢は新たに2024年から1万円札の「顔」となることが決まっている。もし現代に渋沢がいたなら、政治の在り方について何と言うだろう。