<金口木舌>夏の王者


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 数字の「六」は「りく」とも読む。名護親方、程順則の「六諭衍義(りくゆえんぎ)」がそうだ。慶応義塾の応援歌「若き血」が「陸の王者」と歌うのはそもそも六大学の「六(りく)の王者」の意だという

▼六大学の応援歌の替え歌が聞かれたのはかつての八重山の3高校陸上大会。八重山高、八重山商工高、八重山農林高の学校対校の陸上競技で「若き血」などが歌詞を変えて高らかに歌われた
▼八重高生が大切に歌い継いできたのは「第一行進曲」 だ。1965年の校歌制定まで代わりに歌われた。卒業生はスタンドで肩を組んで歌いたかったことだろう。高校野球夏季大会で八重山が優勝を決めた
▼久しぶりの台風が訪れた蒸し暑さを吹き飛ばすようなはつらつとしたプレーが印象的だった。準決勝で最大5点差を逆転し決勝に進出。優勝戦では中盤の好機に高い集中力を発揮し、一気の攻めで優位に立った
▼準優勝のKBC未来、四強の日本ウェルネスと新興勢が伝統校、強豪校に競り勝って上位に進出した。大学対抗よろしく、沖縄の高校野球のさらなる群雄割拠を予感させる戦いぶりだった
▼各校がどうにか気持ちをつないで挑んだ大会。優勝タイトルは残念ながら沖縄大会の歴代成績とはならない。しかし県勢の甲子園初出場、初勝利といった球史の中で記憶に残る夏の王者である。銀傘に第一行進曲が響く日へと必ずつながる。