<金口木舌>地元の商店へ行こう


社会
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 「よく飲み屋のママさんたちが天ぷら持って回収に来た」。新人の頃、取材先の警察署で幹部たちの思い出を聞いた。月給が現金支給だった時代、後日精算する約束で飲み食いする「掛け」でなじみの店で飲むことがあったという

▼浦添市の屋富祖通りで2017年まで60年にわたって営業してきた「宮城商店」は帳面持参の人には掛け売りもした。店を切り盛りした宮城キク子さんは「昔は現金を持っていない人も多かった。みんな助け合いながら生きていた」と店をたたむ前に懐かしそうに振り返った
▼現金を介在させない掛け払いや前払いなどの取引は、「信用」が重要。掛け払いなどに代わりクレジットカードやスマートフォンの決済アプリなどが一般的になり、事業主と消費者の売り買いを支える
▼ペイペイならぬ「田嘉里ペイ」が大宜味村田嘉里区で始まっている。電子決済ではなく、共同売店を利用する区民が店にお金を預けるシステム
▼新型コロナウイルス感染拡大防止のため、店側が現金の受け渡しを極力少なくしようと5月ごろに開始した。共同売店オーナーの山上晶子さんは「同じ地域で顔が分かるので安心」と話す
▼緊急事態宣言で不要不急の外出自粛が求められているが、生活必需品の購入は必要だ。内需拡大も目指しつつ、信用し合える地元の商店で旧交を温めるいい機会かもしれない。