<金口木舌>ある予兆


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 異臭騒ぎが相次いでいる。神奈川県横須賀市など三浦半島の複数箇所で「ガスの臭いがする」との通報が、今年だけで6、7、8月と3回続いて、原因不明で周辺住民を不安がらせている

▼この異臭、巨大地震の予兆ではないかと指摘する地震学の専門家もいる。岩石が圧力を受けて破壊する際にこげたような独特な臭いが発生し、1995年の阪神・淡路大震災発生の数カ月前も地元で異臭が観測されていたという
▼南海トラフ地震や首都直下型地震の警鐘が鳴らされて久しい。豪雨災害も毎年各地で発生し、防災意識も高まっているためか、防災グッズの売り出しも目につく。遅まきながら自宅でも避難バッグを点検した
▼1923年9月1日正午前、南関東を中心に関東大震災が起きた。約10万5千人余の犠牲者を出した。「朝鮮人が井戸に毒薬を入れた」など流言飛語が流れ、信じた人らによって多くの朝鮮人や中国人、日本人が犠牲になった
▼当時近衛兵だった詩人伊波南哲は、「朝鮮人による宮邸襲撃」に備えて軍の指令で警護に就いたと記した。沖縄史研究家の比嘉春潮は、自警団から「ことばが少しちがうぞ」と朝鮮人に間違えられて警察に連行された
▼デマの発言には差別意識の存在が指摘されている。一方で朝鮮人虐殺はなかったなどとする誤った歴史認識が今もくすぶる。決してそれは、昔の話ではない。