<金口木舌>介護を支える手


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 作家の落合恵子さんの著書「母に歌う子守唄」は認知症の母親を介護した日々を描く。認知症の実情、ヘルパーや主治医との付き合い方など介護を体験した人ならではの逸話をつづる

▼「介護を社会に共通するテーマとしてさらに根づかせたい」という思いから出版した。介護を社会全体で支えようと公的な保険制度が始まり4月で20年。制度は浸透したが、高齢化と財政難が急速に進む中、利用者らの負担増と福祉サービスの縮小が繰り返されている
▼介護のため退職する人が後を絶たない。総務省の調査によると2016年からの1年間に県内で介護や看護を理由に離職した人は1600人いた。背景に仕事と介護の両立の難しさがある
▼県の調査では昨年7月時点で、介護休業制度を就業規則で規定していない県内事業所は25・6%に上った。制度の不備が離職につながっているとみられる。介護離職は家族の経済基盤を揺るがし、企業も貴重な人材を失う
▼介護休業が取得できるならその間、福祉サービスの利用を申し込むなど準備ができる。介護と仕事の両立には職場の理解と支援が欠かせない
▼落合さんは社会保障を誰もが可能な限り自立的に暮らすための「予防」であり「丁寧におつきあいします」という安心感に例える。充実した福祉サービスと家族や友人ら身近な人によるケア。介護を支える手は多いほどいい。