<金口木舌>それぞれが門番に


社会
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 「悲しいのは僕らも同じだから、ファンも今こそ強くいてほしい」。ロックバンドの「X JAPAN」メンバーだったYOSHIKIさんが1998年5月、記者会見で呼び掛けた。数日前にギタリストのhideさんが急逝し、ファンに動揺が広がっていた

▼人気俳優の竹内結子さんが急逝した。プロレスラーの木村花さんや俳優の三浦春馬さん、芦名星さんら芸能界で自殺とみられる事例が相次いでいる。著名人の死は社会的影響が大きく、86年に歌手の岡田有希子さんが亡くなった後にも問題化した
▼芸能人は一般的な印象より孤独な職業だという。識者は周囲の人々が自殺を防ぐ役割を担うことができると指摘している。厚生労働省は悩みを抱える人に「いのちの電話」などの活用を呼び掛ける
▼警察庁によると2019年の自殺者数は2万169人。過去最少だったが10代の自殺死亡率が上昇するなど課題は残る。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を不安視する声もある
▼かつて自殺率の高かったフィンランドは自殺の動機を分析し、関係機関に情報提供した。地域や企業にメンタルヘルス重視を促し、自殺率を改善させた
▼自殺を個人だけの問題にしてはならない。悩みを抱えた人を孤立させないよう行政が対策を講じ、周囲がそれぞれの立場でゲートキーパー(門番)の役割を果たす必要がある。