<金口木舌>大舞台への飛翔


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 訓読みが同じ漢字の使い方に迷うことがある。例えば「生む」と「産む」。漢字の使い分けときあかし辞典(円満字二郎著)によると母親側に視点がある場合は「産」だという

▼名人や発見が世に出るの意味では「生」。新記録や優勝者が出たということにも使える。沖縄にとって50年ぶりの選手権者が生まれた。陸上日本選手権で男子走り幅跳びを制した津波響樹選手だ
▼県出身の日本選手権優勝は1937年から円盤投げ4連覇の宮城栄仁選手、70年の三段跳びの具志堅興清選手以来3人目。2006年に幅跳びの仲元紀清選手が2位に入るなど、近年はフィールドで2位入賞はあったが頂点には届いていなかった
▼新潟で行われた日本選手権で津波選手は7メートル99の跳躍で逆転優勝を決めた。ただ「満足していない」という。持ち記録は8メートル23で、まだベストにはほど遠いからだろう
▼開幕から徐々に上げていくところだが、今季は開幕が8月と遅れた。それでも初戦から7メートル76、7メートル88、7メートル92と着実に伸ばし最終戦で8メートルに迫った。シーズンがもう少し長ければと思わせる
▼陸上の種目には「跳ぶ」を使うが、同じ読みに「飛ぶ」「翔ぶ」がある。津波選手の目標は東京五輪。スポーツの祭典を目指す挑戦にこれから飛び立つ。五輪の舞台。天翔(あまかけ)るような大跳躍で世界のトップジャンパーと競い合う姿が見てみたい。