<金口木舌>見えにくい「ヤングケアラー」


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 10年ほど前、取材で重度の障がいのある幼児とその家族を訪ねる機会があった。一家は本島南部に在住。幼児のきょうだいである姉たちは当時、小中学生。母親のそばで幼児の着替えを手伝う姿が印象的だった

▼夜中に幼児の体調に異変があると、起きて両親を呼びに行く子もいた。母親は時折、きょうだいを1人ずつ連れて外出した。「親に甘えられず我慢を強いていないか」。母親は心配し、一対一で話す機会をつくるようにしていた
▼厚労省が「ヤングケアラー」に関する初の実態調査を12月に始める。「ヤングケアラー」とは、病気や障がいのある親、祖父母、幼いきょうだいなどの世話をする18歳未満の子どもを指す
▼世話の負担が大きいと学校を休みがちになったり、進路選択に影響を及ぼしたりする。介護の経験はマイナス面ばかりではない。他者の痛みに気付き、優しさも想像力も身に付くだろう。前述の一家を思い出すと実感する
▼課題は年齢や心身の成長に見合わない重い負担を背負っているかどうかだ。大阪歯科大の教員らが公立高校の生徒を対象にした調査で約20人に1人が家族を介護していた
▼高齢化と核家族化の増加が背景にあり「介護は家族が支えて当たり前」という風潮が存在を隠してきたと言われている。実態の把握とともに、子どもたちの学ぶ権利の保障という視点からの支援が急がれる。