<金口木舌>会見の流儀


社会
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 米国で特派員をしていた頃、米国防長官の会見には毎回出て質問したが、それ以外に政府高官への取材も頻繁に申し込んだ。個別インタビュー実現の“打率”は相当低くはあったが

▼なぜか全国紙や公共放送だけが選ばれるシーンも少なくなかった。米国でもメディアを都合良く選別するもんだと思ったが、それでも会見には平等に出席できたし、質問も事前聴取などなく行えた
▼翻って今の日本はどうだろう。首相会見は、昨今の新型コロナウイルス対策もあって会見場に入れる人数が限定され、官邸記者クラブ「内閣記者会」の常勤幹事社のほかは抽選という仕組みが、安倍政権から続いている
▼会見が設定されたと聞き官邸に行くと既に「抽選終了」。菅政権で初の首相会見には頻繁に問い合わせてようやく抽選参加にこぎ着けるも落選。地方紙の枠はなくても、フリー記者と外国報道の枠は常に確保されている
▼首相と記者とのやりとりはかつて小泉政権で昼夜2回、官邸で質問に応じていた。それが旧民主党の菅直人首相が震災対応を理由に無くして以来行われていない
▼菅義偉首相が7年10カ月ぶりに内閣記者会のインタビューに応じた。だが申し込んだメディアから選ばれた3社が質問し、他社は傍聴する格好。安倍政権は恣意(しい)的とも言えるメディア選別をしたが、それも「継承」なら、地方の声は聞こえてこない。