<金口木舌>人権感覚を引き上げよ


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 「訓練が恒常化すれば不安を抱えながら漁業することになる」「人的な被害が出てからでは遅い」。うるま市の漁業関係者が昨年、本紙に語った。津堅島訓練場水域で米軍によるパラシュート降下訓練が常態化している

▼6日に行われた訓練は、米連邦航空局から出ていた航空情報(ノータム)の時間帯を15分過ぎてから物資を降下させた。危険極まりない
▼普段は本島と津堅島を結ぶ定期船や漁船などが頻繁に航行している海域だ。近くにモズクの漁場もある。県やうるま市、市議会は訓練に反対している。昨年5月には市議会の抗議決議からわずか2日後に訓練が実施された
▼政府は1972年の日米合同委員会合意で訓練場の使用条件に含まれているとして同訓練を容認する。ただうるま市議会は過去の抗議決議で、在沖米軍基地の提供・使用条件などを定めた「5.15メモ」で同訓練に「触れられていない」と指摘する
▼嘉手納基地でのパラシュート降下、読谷村トリイステーションでのつり下げ訓練などにも地元は反対している。過去に死亡事故もあり、狭い沖縄で空からの物資投下は危険だからだ。「命を守れ」は最低限の要求だ
▼津堅島訓練場水域の訓練は昨年、一昨年も過去最多の9回。今年もあと1回で並ぶ。米軍は住民が反対する兵士や物資の降下ではなく、人権感覚こそ引き上げねばならない。