<金口木舌>身近に潜むわな


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 海外旅行で外国人から薬物を渡されたら、友人や恋人から勧められたら…。薬物乱用で人生が転落した経験がある薬物依存回復施設「沖縄ダルク」の佐藤和哉氏が高校生に問い掛けた

▼佐藤氏は昨年、那覇市内の高校で開かれた薬物防止講話で登壇した。いかに薬物が身近に潜んでいるかを強調。「思いもしない角度からやってくる。ノーと言える勇気を持って」と訴えた
▼大麻の密売や所持で摘発される若者の増加が著しい。今年上半期に大麻の密売や所持で摘発されたのは2261人で過去最多。全体の約70%を20代以下が占めている。薬物汚染が低年齢化する背景に会員制交流サイトを介したやりとりがある
▼昨年6月には高校生を含む未成年10人が摘発されるなどここ数年、県内でも若年層の事案が増えている。薬物依存に関しては自己責任が問われがちだ。「依存症という病気として捉え、治療する環境を整える必要がある」と精神科医の香山リカさんは言う
▼数年前、高校生の頃に覚醒剤を使用した経験のある男性を取材した。父親から好成績を収めることを強いられ、重圧から逃れようと薬物を使用した
▼依存の背景に目を向けたい。治療と支えてくれる仲間の存在が回復につながる。薬物は心の隙間に忍び寄る。友達との語り合い、趣味に没頭する時間。複数の「お守り」を持ちわなをはねつけたい。