<金口木舌>子どもと向き合えるように


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 数年前、沖縄大学で開かれた子どもの学びと貧困をテーマにした講演会で、小学校教員の話が印象に残った。学力テストの準備や報告書の作成に追われ「子どもと話すゆとりがない」と肩を落とした

▼子どもの異変に気付き、保護者に伝えたくてもままならない。教材研究の時間もない。「何のために教師になったのか」と語る表情は険しかった。教員の多忙化が叫ばれて久しい
▼背景に学力テストの導入、英語の教科化など各種施策の上乗せがあると言われている。琉球新報社が市町村教育委員会に実施した調査では2018年度に月100時間を超える残業をした教員は少なくとも延べ810人いた
▼多忙化の解消は急務だ。文科省が進めている公立学校の給食費を地方自治体の会計に組み入れる「公会計化」は多忙化解消が狙い。教員の徴収・督促業務を行政に移し負担を減らす。しかし、導入している自治体は26%と低迷
▼国語教育の第一人者の大村はまさんは著書で「子どもたちと同じ世界にいたければ、自分が研究し続けていなければなりません」と教師に説く。「忙しい時に半日ほどすることがない時、アイデアがぽろっと出てくる」とはノーベル賞受賞者の吉野彰さんの言葉
▼教材研究には時間とゆとりが必要だ。行政の後押しが欠かせない。教員が生き生きと教壇に立つ姿は、子どもの学ぶ意欲を引き出す。