<金口木舌>食材が取り持つ縁


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 ヘチマの味噌煮にゴーヤーチャンプルー。煮物、炒め物サラダへと七変化し食卓を飾るツナ缶。「トゥーナー」という呼び名の方がなじみ深い人も多いだろうか

▼ジューシーや冷やしそうめんのめんつゆに入れる人もいる。もはや調味料代わりである。お中元やお歳暮にツナ缶をケースで贈る沖縄の文化は、全国でも珍しいという
▼ツナ缶を製造するはごろもフーズによると、県民1人当たりの消費量は全国平均の4倍以上に上る。これだけ県民食としてなじんでいる背景には、食材が傷みやすい亜熱帯の気候で、缶詰が重宝するという事情だけでなく、柔軟にアレンジしやすいということもあるだろう
▼米国に統治された沖縄は、本土と異なる独特の食文化が発展した。1960年代から72年の日本復帰にかけて輸入加工肉食品の消費が急増した。ポーク缶やコンビーフ缶が売れ、研究者によると当時、児童の体重が急激に増加した時期と重なるという指摘もある
▼ポークランチョンミートの輸入販売元である富村商事は、輸入国のデンマークから親子3代にわたり名誉メダルが授与された。「沖縄県の消費量は世界トップレベル」というのがその理由
▼はごろもフーズは、全国トップのツナ缶の消費を誇る沖縄へ「恩返しを」と、首里城復興に1億円を寄付する。食生活を支える「トゥーナー」で首里城再建。不思議な縁だ。