<金口木舌>「不寛容」点検の日


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 就職やキャリアアップのため、日本で実務や勉強に励む外国人が増加している。南西地域産業活性化センターによると、2019年末の県内在留外国人は前年末比3195人(17・7%)増の2万1220人

▼かつて沖縄からも多くのウチナーンチュが海を渡った。戦前や戦後の苦しい生活から抜け出し異国の地で人生を切り開くためだ。豊見城村(当時)の大城幸喜もその1人。1908年にブラジルに渡り、コーヒー農園で働いた後、農作業や鉄道作業に従事し、雑貨店を経営するなど財を築いた
▼45年8月、カンポグランデの大城の家が全焼し、一夜にして財産を失った。第2次世界大戦に連合国側で参戦したブラジルでは日系移民への風当たりが強く、敵視したブラジル人らによる焼き打ちだったという
▼米国でも戦時中は日系人を収容所に送るなど差別が横行した。社会情勢が不安定になるとき、その不満の矛先は社会的少数者に向きやすい。トランプ大統領はそうした不満を巧みに扇動し、分断はより深刻化した
▼「移民に寛容な大統領がいい」。米大統領選でのバイデン前副大統領の勝利に、米在住の県系人らから歓迎の声が上がっている
▼多様性を認め合う世界は実現できるのか。未来をつくるのは私たち一人一人。きょうは国際寛容デー。心の状態が不寛容に傾いていないか、私たち自身を見詰める日でもある。