<金口木舌>コロナ禍とハウジングプア


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 数年前、貧困問題の取材で出会ったある女性の言葉が忘れられない。「家賃が抑えられたら生活が成り立つのに」。女性はフルタイムで働いていた。給与は少なく、子ども2人を育てながら生計を立てるのは厳しいと話していた

▼公営住宅への入居を望んでいたが、希望者が多く倍率も高い。過去10年は毎年申し込んだが「当選しない」と話した。社会保障として住居支援の拡充の必要性を感じた
▼コロナ禍で住まいを失いそうな人が増えている。経済的に困窮している人に家賃を補助する公的制度に「住居確保給付金」がある。那覇市によると2月から10月に支給決定した世帯は751件で、昨年の同時期(17件)の約44倍に達した
▼新型コロナウイルス感染拡大に伴う要件緩和が背景にある。気掛かりなのは最長9カ月の支給期間だ。厚労省は期限を延ばす方針だが、それを過ぎたらどうなるだろうか。受給者は求職活動をしているが、すぐに就職できるとは限らない
▼家計の固定費に占める家賃の割合は大きい。民間賃貸住宅への家賃補助や民間の空き室を公的な家賃補助対象の部屋に転用、保証人制度の撤廃など打てる住宅施策はある
▼住宅政策の貧しさがコロナ禍で顕在化した。家賃が軽減できたら生活が安定する人もいるだろう。「ハウジングプア」の防止策は、生活保護の一歩手前のセーフティーネットになる。