<金口木舌>新人アナライザーの挑戦


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 6年間の旅にはどんな風景が広がっていたのだろう。小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に戻った。宇宙航空研究開発機構の研究者、エンジニアの精密なデータ解析や機器開発が長旅を支えた

▼20キロ上空から甲子園のマウンドに下ろすと例えられた惑星への着陸に成功した技術力である。惑星探査は小惑星の地球衝突回避にも役立つと聞くと人ごとではなくなってくる。科学の進歩が生活のさまざまに影響する
▼機器を駆使したデータ収集や分析はスポーツでも不可欠になった。都市対抗野球の中継には弾道測定器が導入された。投球の回転数や打球速度を紹介し、解説に新たな視点が加わった
▼その都市対抗で11年ぶりに優勝したホンダ(狭山市)。快進撃を県出身の野球人が分析役として支えた。沖縄尚学高で主将を務め、選抜優勝を経験した西銘生悟さん(30)だ
▼中大を経てホンダ入り。7年目の昨季で勇退し、アナライザーに就いた。相手の情報を集めて分析、自軍選手のデータも含め、戦術を練る監督らに提示する仕事だ。社会人でも置くチームが増えている
▼公式戦が減り、情報収集に苦労したようだが、最高の形で今季を終え、新たな年に向かう。折しもはやぶさ2の100億キロの新たな旅出と重なる。可能性に富んだ領域である。プレーヤーでも鳴らした西銘さんのパイオニアとしての活躍が期待される。