<金口木舌>疫病退散を祭りに昇華

 祇園祭の山鉾(やまぼこ)の車をつくる車伝(くるまでん)に弟子入りした三吉は、5年目に親方から矢をつくる仕事を任される。車輪の支え木を矢という。三吉はうれしさのあまり、仕上げた矢にこっそり自分の名前を彫る

▼これは幕末を舞台にした吉橋通夫さんの童話「さんちき」の一場面。車伝にとって山鉾の車をつくる仕事は誇り。気に入った車ができあがったとき、車伝は名前をそっと彫ったという
▼祇園祭は京都市内の山鉾巡行が見どころだ。平安時代の869年に疫病がまん延し多くの死者が出たときに、当時の国の数にちなんだ66本の鉾を神泉苑に立て、災厄の収束を祈ったことが起源とされる
▼今年は新型コロナウイルスの影響で一部の神事をのぞき中止となった。祇園祭は来年に持ち越されたが、佐喜眞美術館で開催中の田島征彦さんの展示会「疫病退散祈願!祇園祭絵巻」は、祭りの熱気を感じる機会になる
▼田島さんの絵本「祇園祭」の原画も展示している。同館は公式サイトで、疫病に対抗する精神を美しい祭りに昇華し闘った都人の知恵に学びたいとつづる
▼「さんちき」の親方は三吉の行為をいさめず、逆に熱意を受け止め、三吉に「きっと腕のええ大工になるで」と未来への希望を託す。人類はさまざまな疫病を乗り越えて命をつないできた。ワクチン開発の朗報も聞こえる。希望を失わず新年を迎えたい。



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