<金口木舌>ガンジーの教え


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 「他人に変わってほしければ、自ら率先して変化の原動力となるべきだ」。非暴力・不服従運動で知られるインド独立の父マハトマ・ガンジーの言葉である

▼新型コロナウイルスの感染再拡大で政府が「5人以上」の飲食は控えるよう国民に呼び掛ける中、菅義偉首相の行動が波紋を広げた。GoToトラベルの全国一時停止を表明した14日の夜、経営者ら15人前後と懇談し、自民党の二階俊博幹事長ら8人程度とも会食した。会食の「はしご」を批判された菅首相は「真摯(しんし)に反省している」と釈明した
▼国民は「4人までならいいけど、5人はだめなの」「どれくらい距離を取ればいいのか」と振り回され、会食に行くべきかやめるべきかと悩む。飲食店も同様である
▼国内の感染者は累計で20万人を超えた。11月から本格化した「第3波」の流行は衰える兆しはなく、日本医師会など9団体は「医療緊急事態宣言」を発表した。ところが、首相の行動からは医療現場が訴える危機感は伝わらない。むしろ温度差が際立つ
▼海外では、政治指導者の行動が誤ったメッセージとなり、国民の生命を脅かす事例も起きた。世界保健機関は指導力の欠如がパンデミックを加速させたとみる
▼ガンジーは自分に厳しかったとされる。医療崩壊の危機が迫る中、政治指導者は自らの行動を顧みてはどうだろうか。国民はその行動を見ている。