<金口木舌>アール・ブリュットの芸術家から学ぶこと


社会
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 薄暗い森の中、大きな台座に立つ2人が歌で問い掛ける。「つまずいたらどうなる。転んだらどうなる。私は怪物になるのか」

▼世界的なアーティスト、ショーン・メンデスさんとジャスティン・ビーバーさんのコラボ曲「Monster(モンスター)」と、そのビデオ作品。才能を称賛され、若くして成功を収めた2人の苦悩が歌詞に込められている
▼うつ病との闘いをかつて告白したビーバーさん。世間の目は羨望(せんぼう)と批判の間で揺れ動く。ビーバーさんは中傷や嫉妬に動揺したことなどを赤裸々に歌う
▼世界保健機関はうつ病に悩む人が世界で3億人に上ると推定する。原因はさまざまだが、周囲の評価を過度に気にしてしまうことも一因となるようだ
▼ゆがふホールディングス(名護市)が浦添市港川に建設中の施設の仮囲いに、知的障がいのある作家のアート作品を展示し、場を和ませている。美術の専門教育を受けていない人や障がいのある人の「アール・ブリュット(生の芸術)」の魅力はどこから来るのか
▼作品販売などを通して障がい者の自立を支援する「9Earth gardener」の田代香菜子代表は「一生懸命描くが、評価は気にしないようだ」と描き手の特徴を語る。目の前のことに集中し、評価に執着しない。つまずきそうなとき、アール・ブリュットの芸術家から学ぶことがありそうだ。