<金口木舌>大みそかに思うこと…


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 2020年が終わろうとしている。東京オリンピック開催を夏に控えた年始めには誰もこのような年になるとは想像していなかった。新型コロナウイルスの感染拡大で異例づくしの1年だった

▼4月の緊急事態宣言で私たちの暮らしは一変した。休業、時短営業、自粛で冷え込む経済に家計や雇用の不安は高まった
▼政治の透明性と説明責任を巡り、今年も国民の信頼は揺らいだ。「桜を見る会」や日本学術会議の任命拒否問題などに対する十分な説明は乏しかった。コロナ対応と合わせ、政治指導者の資質を考えさせられた
▼沖縄に目を転じると、基幹産業の観光が大打撃を受け、県経済も大きく落ち込んだ。生活に困窮する人が増え、離島医療の脆(ぜい)弱(じゃく)さも浮かび上がった。一方、困窮世帯への食料提供など支援活動が広がり、県民による助け合いが見られた。危機に直面して多くの気付きがあった1年だった
▼辺野古移設では政府が民意をくみしない姿勢を続ける。泡消火剤流出事故など米軍基地が集中する沖縄のひずみがあらためて露呈した。年明けには米国に新政権が誕生する。政府が解決に向け本腰を入れることを切に願う
▼この1年、コロナ禍で社会のありようが問われた。今年を振り返り新たな1年に思いはせる大みそか。“禍(わざわい)”を転じて福となす。来年は逆境をはねのけ前向きに生きていける年にしたい。