<金口木舌>「PPK」とはいかない現実

 「PPK」とは「ピンピンコロリ」の略。「できる限り元気に生きて長患いせずに死ぬこと」を意味する。「普段の健康増進が大切」という趣旨だが、簡単なことではない。穏やかな晩年を送るには周りの支えも必要となる

▼介護保険がスタートして20年がたった。「介護は家族任せではなく、社会で支えよう」という趣旨が原点にあった。ケアを担うのは主に嫁や娘で女性がほとんど。女性の悲鳴が社会を変えた画期的な制度だった
▼法案が通るまでに、どれだけの女性たちの涙と苦労があったのだろうと思いをはせる。東京大学名誉教授の上野千鶴子氏は「ケアは非暴力を学ぶ実践」と語る。育児や介護をする中、怒りで拳を握ったことは、誰もが一度はあるだろう
▼悲痛な声は今も続く。先日、福井県で72歳の女性が要介護の夫と義父母を殺害した事件の判決があった。懲役18年。介護疲れが背景にあったとされる。70代が夫と90代の親の面倒を見る「老老介護」は深刻さを増している
▼報道によると被告は家族に「村一番の嫁」と言われていたという。育児・介護の過剰な美化は、時に人を追い詰めかねない。暴力を防ぐには、家族以外のおせっかいが必要だろう
▼「PPK」の対義語に「NNK」(ネンネンコロリ)という言葉もある。介護する側もされる側も幸せになる社会の仕組みとは何かを、事件は問い掛けている。


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