<金口木舌>SDGsのはるか前から


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 澄み切った空気や視界全体を覆う奥深い森。神秘的な森でヤンバルクイナと遭遇したときの感動はやんばるでしか味わえない

▼1981年に新種登録されたヤンバルクイナは、2005年に推定個体数が700羽程度まで減少。野生化した猫やマングースによる捕食被害が問題になった
▼立ち上がったのは国頭村安田区。家猫の適正飼養規則を定め、マイクロチップによる飼い猫の登録制度などを導入。NPO「どうぶつたちの病院沖縄」と協力し、事故に遭ったヤンバルクイナを保護する救急救命センターも設置した
▼小さな区の地道な活動は県、国を動かす。環境省は2010年、飼育繁殖施設を設置するなど、住民自治の活動は着実に結果となって残った。ヤンバルクイナの個体数は現在、1500羽程度まで回復。「自然の中で生かされてきた」という区民の思いがやんばるを守る原動力
▼50年前、地域とやんばるの自然への愛着は米軍の決定をも覆した。1970年12月31日、安田の伊部岳で、米軍の実弾砲撃演習を住民らが総出で阻止。「伊部岳実弾演習阻止闘争」として歴史に刻まれている
▼守り抜いたやんばるの森は世界自然遺産登録候補地。ヤンバルクイナ保護活動が認められ安田区がこのほど、地域再生大賞優秀賞に選ばれた。SDGsが注目される前から「持続可能」を追求してきた安田区に学ぶことは多い。