<金口木舌>五輪開催に不可欠な指導力


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 派手なものは望まない。必要な機能を備えた車を購入するつもりで70万円を家計から捻出してもらった。小さい方が環境にも優しい

▼だが見積もりが甘く、実際にかかるのは4倍の約300万円。家族は納得せず、計画は諦めざるを得なかった。家計の話に置き換えたら、東京五輪の中止はやむを得ないかもしれない
▼「コンパクト五輪」の経費は7千億円のはずだったが、会計検査院は暑さ対策や道路整備費など関連経費を含めると3兆円を超えると指摘。コロナ禍の中、五輪よりも国民への支援をより手厚くしてほしいというのが多くの人の本音だろう
▼共同通信の1月の世論調査では「中止」と「再延期」を合わせた見直し派は80・1%。膨大な費用に加え、大会組織委員会の森喜朗前会長の失言と辞任、その後の透明性を欠く後任決定など一連のドタバタで完全に民心は離れつつある
▼最優先にすべきは国民の命と安全。開催にこだわるなら、1月にエジプトで開かれたハンドボール世界選手権にならい、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため無観客、PCR検査の徹底で開催する方法もある
▼それでも当初の「過少申告」には明確な説明が必要だ。五輪に乗じて私腹を肥やす人がいるのではないかという疑念が国民の間に膨らんでいる。菅義偉首相は今一度、政府の「五輪家計簿」を点検し直してはどうだろう。