<金口木舌>ソテツ地獄とSDGs


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 「明日の食糧をどうするのか。それだけのために奔走している」「次第にソテツもなくなって本当の危機が来たらどうなるか」。1951年に城辺町(現在の宮古島市)で当時の友利景一町長が取材に答えている

▼台風が連続で襲来し、農作物に深刻な被害が出た宮古島では一部の住民がソテツを食べ、飢えをしのいでいた。ソテツ地獄といえば戦前の印象があるが、戦後も離島などはたびたび食糧難に直面した
▼沖縄市立越来中学校の生徒たちがアクアポニックスの研究に取り組み、沖縄青少年科学作品展で県知事賞を受けた。アクアポニックスは魚などの排せつ物を肥料に野菜を育て、浄化した水を水槽に戻す生産システムだ
▼野菜の栽培に適した水質で生きられるザリガニを見つけ、排せつ物で葉野菜を大きく育てた。生徒らは「食べ物が不足している地域で食材を確保する方法になると思う」と語る
▼世界で飢餓に苦しむ人は国連の推計で約7億人。紛争や気候変動に加え、新型コロナウイルス拡大も追い打ちをかける。国連世界食糧計画のビーズリー事務局長は昨年12月、ノーベル平和賞の授賞式で飢餓の問題に世界の注目が集まることを望んだ
▼かつて食糧難に苦しんだ沖縄で新世代が可能性を追求している。小さな島の子どもたちの研究も、人類が手を取り合い、持続可能な地球をつくる取り組みの一つに違いない。