<金口木舌>選ばれるのはユニバーサルな設備


社会
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 「助けてちょうだい」。先日、那覇市内のコンビニエンスストアで飲食コーナーにいた高齢女性から呼び止められた。座面の高いいすから降りようにもつま先が届かず、いすががたがたと揺れている

▼女性は当方の腕につかまりいすから降りた。「倒れるかと思った。もう二度と来ない」。ほっとした表情を見せながらもそそくさと店を出た。座面の高い形状のいすはカフェでも見掛ける。足腰の衰えた人には、危険が伴う
▼街中に目をやると滑りやすいタイル張りの歩道、屋根のないバス停、スーパーの狭いトイレ…。利用しづらい設備や空間はまだある。外出機会をためらう一因になるだろう
▼一方、多くの人にとって利用しやすい製品、建物、空間も見掛けるようになってきた。車いすやベビーカーの利用者が乗降しやすい低床バス。空間の広い多機能トイレ、低い位置に押しボタンのある自動販売機も一例か
▼これら設備は「ユニバーサルデザイン」と呼ばれ、1980年代に米国のロナルド・メイスが提唱した。身体への負担が軽い、分かりやすい表示などが特徴だ。政府は東京五輪・パラリンピックを契機に、駅ホームの改修などユニバーサルデザインの街づくりを強力に推進している
▼少子高齢化は確実に進んでいる。利便性だけではなく、利用者目線に立った設備や空間を提供する場所がますます求められるだろう。