<金口木舌>銃口の先に


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 以前、那覇―沖永良部間の空路でプロペラの小型飛行機に乗った。座席はパイロットの隣。目の前には操縦かんと計器。飛行中、ジェット機と比べて地面が迫るように近かった。初めての体験は半分おっかなく、半分興奮した

▼在沖米軍が7日、飛行中のヘリから撮影した画像をSNSに上げた。銃口の先にあるのは市街地。一県民として標的にされた気分になり不愉快だった。投稿者の心境は、まさに高みの見物か
▼米軍が21日に投稿した別の動画では、キャンプ・ハンセン上空のヘリからの射撃を写していた。誇示をしたいのか。隣接する金武町の住宅街では、ハンセンからの流弾事件などが頻繁に起きる
▼県民が撮影したのは、米軍機が低空飛行する動画。ことしに入り目撃が相次いでいる。沖縄本島の沿岸部のほか座間味、渡嘉敷など慶良間諸島を縫うように米軍の特殊作戦機とみられる大型機などが低空飛行する
▼76年前のこの時期、米軍は慶良間諸島や沖縄本島に空襲や艦砲射撃などの攻撃を加えた。26日には座間味、27日には渡嘉敷に上陸した。やがて「集団自決」(強制集団死)も各島で起きた
▼渡嘉敷村の戦争体験者(83)は今回の低空飛行を幾度も目撃し、憤った。「戦時中の米軍機の襲来を思い出す。県民をばかにしているのか」。誰もが願うのは安全な空の下での尊厳ある暮らしだ。私たちは標的ではない。人間だ。