<金口木舌>知恵の絞りどころ


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 「今回の内閣は体育会系だ。『やれと言ったらやれ』という感じだ」。第2次安倍政権が発足してしばらくして、ある官僚がこぼした

▼官房長官時代の菅義偉氏の人物評。「三度の飯より人事が好き」「口数の少なさがかえって威圧感を与える」。日本学術会議の会員候補6人の任命拒否問題や記者団に対する憮然(ぶぜん)とした態度など、首相になってからもその姿勢は一貫している
▼官邸政治の内幕を描いた小説「電光石火」は2015年の発刊当時、政府関係者の間で話題に。会合のこなし方や、評価した官僚を重用する小山内和博官房長官のモデルが菅氏なのは一目瞭然
▼「今度の内閣は長期安定政権だ。そこがこれまでの交渉と全く違うことを知事にも県民にもわかってもらうしかない」。普天間飛行場の辺野古移設を巡り、小山内官房長官は沖縄訪問時に秘書官に語る。強権ぶりや政敵を分断させる策士ぶりを見事に描写している
▼だが実際の政権に見られる身内には甘いという側面は小説ではほとんど触れられていない。坂井学官房副長官が菅氏に近い自民党有志でつくる「ガネーシャの会」の会合を官邸で開いていた。官邸は党内部の会合を開く場所ではない
▼追従する人たちを除き、辺野古新基地建設に反対し続ける沖縄には冷淡そのもの。負担を押し付け続ける不合理な圧力にどう向き合うか。沖縄の知恵の絞りどころだ。