<金口木舌>ハードルを越えて


社会
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 陸上競技のハードルで新たな県記録が生まれた。400メートル障害で福岡大の津波愛樹選手が打ち立てた。従来の記録は1998年の新地さゆり選手のもので、23年ぶりの沖縄レコードだ

▼ハードルの前に来て、いちいち足を合わせるわけにはいかないから、スタートからの歩数が大事になる。津波選手は絶妙の歩数配分で加速し、見事に県新を出した
▼あまりに高いハードルを越えてみせてくれたのは競泳の池江璃花子選手だ。抗がん剤治療を経て、実戦復帰した昨年8月のやせた姿から誰が想像できたか。一度は諦めた地元での五輪の代表入りを決めた
▼自由形より技術も体力も必要なバタフライでの代表入りがより驚きとなって広がった。日本新を連発したかつての体力ではないが、ピッチを上げて対応した非凡さである
▼男子の入江陵介選手が「日本中を勇気づけた」とたたえたようにカムバックは闘病中の人を含め多くを奮い立たせた。ただ、十分とは本人が思っていないはずだ。開催中の日本選手権で他種目にも出場し、2枚目の五輪切符のさらなる高みに挑む
▼陸上のハードルは故意でなければ倒しても失格とはならない。つまずいても立ち上がればゴールできる。新年度、新たな挑戦を始めた方もいるだろう。くじけそうな時、聞き慣れた言葉だが池江選手のこの一言は力になる。「努力は必ず報われる」