<金口木舌>やられた方は忘れない


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 「心の痛手はやられた方だけが/忘れないのさ」。忌野清志郎さんの曲「CHILDREN’S FACE(チルドレンズフェース)」の一節だ。約束を破る「子供の顔したアイツ」について皮肉を込めて歌っている

▼過去の行いを加害者が忘れたとしても、やられた方は忘れない。いじめから外交問題までさまざまな場面で使われる言葉だ
▼読谷村の米陸軍トリイ通信施設で3月23日と今月1日、米軍ヘリがフォークリフトをつり下げて飛行した。村は同施設での戦術訓練を認めていない。村議会は抗議決議を可決した。フォークリフトは種類によるが重さ1トンを超えるものも多く、危険だ
▼同村で1965年、米軍機が落下させたトレーラーの下敷きになって少女が亡くなった。米軍は2006年にも読谷村沖で廃車を海に落とした。昨年2月に米軍が鉄製の標的を海上に落下させた事故の原因も、解明されていない
▼つり下げについて村や村議会は何度も抗議し、国側は「米側に伝える」と答える。日米両政府は地元が納得する説明をしていない。村民からは「地元の声は米側に届いているのか」との疑念も示される。米軍は65年の事故を忘れたのか
▼冒頭の曲は「そーだぜおいらは一度裏切った奴(やつ)は/二度と信用しねえ」と終わる。過去に命が奪われ、現在も危険にさらされる。県民が日米両政府を信用するのは難しい。