<金口木舌>SNS介した薬物汚染


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 10代の頃に覚醒剤にのめり込んだ男性の話を聞いた。幼少時代から学力を重んじる父親の期待に苦しんだ。高校生になると重圧に耐えられなくなり、逃れるように薬物に手を出した

▼取材で出会った別の男性は、遊び仲間に誘われシンナーに手を出した。実親を知らず、複雑な家庭環境の中で育った。吸引すると気分が高揚した。より強い刺激を求め手放せなくなった
▼スマートフォンの普及が新たな問題を引き起こしている。違法薬物が簡単に手に入るようになった。2~3月にかけて、県内の高校生ら未成年の少年・少女が覚醒剤や大麻所持で逮捕された
▼少年らはSNS上で客を募り、投稿に「いいね」を押した客に大麻を譲渡するイベントを実施し客を増やしていた。「早ければ数時間以内には、薬物が手に届く」という元売人の証言もある。県警が県内の未成年者の薬物使用を「まん延状態」と警告するなど深刻な状態にある
▼薬物乱用に詳しい専門家は、コロナ禍でアルバイトを失いお金に困ったり、暇を持て余した生徒らが薬物に手を染める傾向を指摘する。ネットを介するやりとりは売る側の顔が見えない。簡単に購入できるため心理的ハードルは低い
▼軽い気持ちから吸引し依存性が強いだけに中毒になると、元に戻るのは難しい。タップ一つで失うものは大きい。大人は何をすべきかが問われている。