<金口木舌>誰かの支えに


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 「酒が空(あ)いたグラスあれば直(す)ぐに注ぎなさい/皆がつまみ易(やす)いように串外しなさい/会計や注文は先陣を切る/不文律最低限のマナーです」。女性シンガーAdo(アド)さんが歌う「うっせぇわ」の歌詞だ
▼動画共有サイトユーチューブで再生回数が1億回を突破した。力強い歌声で子どもたちにも人気だが、世代間ギャップに直面する若い世代の背を押す歌詞も魅力的だ
▼コロナ禍で新年度が幕を開け、1カ月が過ぎる。進学や就職で新たな環境に挑戦している人は多いだろう。疲労が蓄積し、緊張感も解けて「五月病」となる人も多い時期だ
▼2020年の自殺者数は全国で前年に比べ912人増の2万1081人。うち19歳以下は118人増、20代は404人増と、若年層の増加が顕著だった。人との交流が制限されるコロナ禍で、環境が変わった人たちを孤立させない対策が急務だ
▼政府は「子供・若者育成支援推進大綱」で今後5年間の対策をまとめた。会員制交流サイト(SNS)などを活用した相談体制の充実などを対策に挙げる
▼Adoさんの名前は能や狂言のシテ(主役)とアド(相手役、脇役)に由来するという。曲を聴いてくれる相手の「支えになりたい」との思いを込めているそうだ。新たな環境に進んだ人が孤立していないか。身近な人を支えることができる優しい社会の一員でありたい。