<金口木舌>お年寄りが移動しやすい社会に


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 高齢の親類男性が自動車の運転免許証を自主返納した。家族の送り迎えや仕事などで長年慣れ親しんだ運転を諦めるのはよほどさみしかったのだろう。涙の返納だった
▼定年後にも各分野で活躍する高齢者がいる一方、高齢者による交通事故も社会問題に。2019年に東京・池袋で高齢の男性が運転する乗用車が暴走し県出身の女性と娘が巻き込まれて死亡した
▼1900年5月10日に催された後の大正天皇の結婚式の記念品として、サンフランシスコの日本人会が1台の自動車を贈ったが、試運転で皇居の堀に転落。日本初の自動車事故として記録される
▼2005~07年に全米で発生した交通事故を調査した米運輸省は「94%は人為的な誤作動」と結論付けた。ハンドル操作やブレーキの踏み違いなど人為的ミスは県内でも確認されている
▼交通事故の削減に期待されているのは自動運転車。技術革新は進むが、米電気自動車メーカーのテスラ社の車両が運転支援機能作動中に事故を起こすなどまだ課題が残る
▼親類の男性はバス運転手だった。幼少期に帽子をかぶらせてもらったことがあるが、運転手になったようで誇らしい気持ちになった。子どもたちを車で送り届け、バスのハンドルを握り沖縄社会に貢献してきた。免許証返納後も気兼ねなく移動できる近未来の交通システムはいつ実現できるだろうか。